愛する故に憎むのか、憎む故に愛するのか。
陳腐な問いかけの前に、しかし私はいつだって立ち尽くす。
その問いに答えるものはなく、また自身も答えることは敵わない。
唯一つわかることは、私は未だかの人を愛しているということ。
そしてそれと同時に、私はかの人を憎み続けているということ。
相反するその二つの思いは不思議なほど私の中で調和しているということだ。
「おはようございますヴェルジュ様。ご気分はいかがですか?」
問いかけたアルトは酷く平坦だった。
声をかけながらもその主の視線はベッドの上には向けられておらず、今は窓際にて分厚く重いカーテンを開ける作業をしている。
これでもかというほどに真っ黒な布が取り払われ、暗い部屋の中を眩しい朝日が照らす。
「……頗る悪い。大体、何故私がこんな朝早くに叩き起こされなければならないのだ? シルヴァーナ」
主の凍りつくような鋭い蒼眸に見据えられながら、しかし彼女――シルヴァーナ・アルベルティはゆらりと緩慢に振り返る。
彼女は朝早くから、既にいつもの黒いメイド服に身を包んでいた。シンプルなデザインのメイド服にスタンドカラーまできっちり止め、セミロングの髪は適当に背中に流してある。
彼女の漆黒の瞳は水平に目の前の主へと向けられていた。
主、カミーユ・ド・ヴェルジュは、寝癖はないにしろ寝起きで乱れた銀の髪を気だるげに撫で付ける。
ヴェルジュ卿――世間から見ればヴェルジュ伯爵――の姿にしては随分お粗末なものであったが、人の手では決して生み出すことの出来ないシャルトル・ブルーの瞳は、朝陽の中でもなお褪せることなく涼やかに、しかし鋭くシルヴァーナを捉えていた。
だがシルヴァーナはそれすらも意に介さない様子で、水平な目線のまま淡々とした口調を崩さなかった。
「お忘れのようなので言わせていただきますが、今日はヴェルジュ様御自身がお決めになったミサへのご出席の日です。
無論お出かけにならないのでしたらこのままお休みになっても一向に構いませんが」
言葉だけ聞けばやたらと刺々しいが、それを紡ぐ声音は至って平坦だ。
「お前、昨日の晩わかっていながらわざと私に今日のことを伝えなかったな?」
「ヴェルジュ様なら無論おわかりになっていると思っておりましたので」
淡々と呟く彼女は恐らく、忘れていると知っていて黙っていた、所謂確信犯なのだろう。
そんな雇われメイドの態度も気になったが、自身すっかり忘れてしまっていたのを不甲斐ないと思ったのもまた事実。
結局彼はそれ以上を追及しなかった。
「……着替える」
「では、下で朝食の準備をして参ります」
恭しく礼をしたシルヴァーナはすぐに踵を返して主の寝室を去った。
すれ違う一瞬、彼女の顔に薄い笑みが浮かんでいたことをヴェルジュは見逃さない。
「……あの腹黒メイドめ……」
ヴェルジュはその彫刻のように整えられた顔を左手で半分覆い、嘆息と共に小さく呟いた。
***
十分ほど経っただろうか。既に下準備まで整えていた朝食の用意を済ませ、優雅に紅茶を飲んでいたシルヴァーナの前にその主が姿を見せたのは。
先程の寝起き姿とは打って変わって、艶やかな銀糸は几帳面に整えられ、切れ長の蒼眸は油断なく辺りを見渡していた。
絹のように滑らかな銀の髪にす、と通った鼻梁、高名な芸術家の作品のように左右対称のその美しい顔立ち。
青白い肌に映える、時の流れによってのみ授けられるそのシャルトル・ブルーの瞳と相俟って、彼の容貌はまるで神の手によって与えられたかのように完璧だ。
それは確かに正しい表現ではあった。
それと同時に、その表現は今や神に対する冒涜に他ならなかったが。
遠い昔、創造者への反逆罪として暗闇の世界に突き落とされた神の被造物は、しかしどれだけ貶められようともその美しさには一切の翳りすらもなく、未だ美しいままでこの世に存在し続けている。
神に対して反旗を翻しておきながら、未だ与えられたその姿を晒し続けるその行為は恐らく神に対する冒涜に他ならないのだろう。
かの有名な神への反逆者、地の底へ堕ち闇の王となりし神の至高の創造物、堕天使ルシフェル。それこそが彼の本性。
それは安易に信用できるような話ではなかったが、彼に仕えてから今までの間の経験を経る内に、その嘘のような話は確固たる真実としてシルヴァーナの中に植えつけられることとなった。
もっとも、彼女にとっては主が天使であろうが、それこそ闇の王であろうがそんなことは微塵たりとて意味を成すことではなかったが。
給金をくれれば仕える相手が悪魔だろうが問題はない。
ただの一メイドに対して破格の給金を与えてくれるこの男は、シルヴァーナにとっては願ったり叶ったりの主だった。
アンティークな造りの主専用の椅子に腰掛けると、彼はシャルトル・ブルーの瞳を光らせて部屋中を鋭く一瞥した。
「……ウォラトはどうした」
「まだお部屋でお休みになっておりますが」
「叩き起こしてこい」
「畏まりました」
恭しく礼をするとシルヴァーナは立ち上がり、部屋を出る直前に背後を振り返った。
「お食事は……」
「いらん」
「と仰られると思いましたので、そこにお茶を用意してあります」
それだけ言い残すと、彼女は一礼を残しそのまま退出した。
明かりの抑えられた暗い廊下をシルヴァーナは進む。
壁に所々飾られた絵画や柱の装丁といい、互いの美しさを損なわないよう配慮されたそれらは持ち主のセンスの良さを感じさせた。
足音すら消してしまうほど毛足の長い柔らかなカーペットの上を進むと、一つの扉の前で彼女は徐に立ち止まった。
コン、コン
軽く戸を叩くが反応はない。彼女は小さく溜息を吐くと、今度は遠慮なしに部屋の中へと足を踏み入れた。
ベッドの上が膨らんでいる。案の定、部屋の主はまだ夢の中らしい。
「ウォラト、起きなさい。ヴェルジュ様がお呼びです」
肩をゆさゆさと揺すって声をかけてはみたものの、ベッドの上の固まりはものの見事に何の反応も示さない。
シルヴァーナはもう一つ溜息を吐いた。
簡単には起きないと思ったか、部屋の隅に置かれた使われもしない鏡台の上にあるものを手に取る。……フライパンとお玉だ。
彼女はそれを枕元に近づけ、お玉でフライパンを力の限り叩いた。
カンカンカンカンカン
「う、うわっ、何だ!?」
シーツの間から奇声を発しながら飛び起きたのは一人の男だった。
紺青の長髪に青い瞳、無駄なく鍛え上げられた体躯に整った容姿と、それだけみればヴェルジュと並んでも見劣りしない相当の美丈夫だが、如何せんフライパンとお玉で起こされるその姿は何処か間が抜けている。
「何だ、シルヴァーナか」
「何だじゃないです。早く行かないとヴェルジュ様の機嫌が悪くなるわ」
「珍しいな、低血圧のヴェルジュ様がこんな早起きするなんて」
小さく欠伸を噛み殺したウォラトは紺青の髪をさらりとかきあげた。
ウォラト自身は低血圧ではないはずだが、彼の寝起きはヴェルジュとは違った意味合いで悪い。
ヴェルジュは起きて早々シルヴァーナを鋭い目線で睨みつけてくるような寝起きの悪さだが、ウォラトは起こしても起こしてもなかなか起きようとしない。
彼女は彼を起こす度にこうしてわざわざ鐘のようにフライパンを打ち鳴らさなければならないのだ。
その方法を使うと彼が必ず起きるのは一つの大きな謎であったけれども。
「今日はミサの日だもの」
「ああそれで、こんな早くに僕が叩き起こされなくちゃならないわけだ」
「何でもいいから早く起きなさい。後で魔法で鳥に変えられて羽を毟られても構わないのなら止めはしないけれど」
「冗談。今すぐ起きるよ」
漸く床に足を下ろした男をシルヴァーナはいつもの水平な目線で見やった。
実際はウォラトの方が頭一つ分高いので上目遣いに見上げる形になるはずなのだが、彼女の水平な目線は至って変わらない。
「朝食は……」
「別に食べなくても生きていけるくせに朝食まで要求するなんてとんだ穀潰しもいいところね」
「……」
「でもそういうと思って朝食の準備はしておいたから早く着替えて降りてきなさい」
「わかった。すぐに行く」
ウォラトのその返事を聞き届けると、黒メイドは部屋から立ち去った。
そろそろ主の機嫌は直っただろうかと一瞬考えたが、恐らくまだだろうとひとりでに小さく肩を竦めた。
***
着替えを済ませて降りてきたウォラトの姿は、主人と同じように寝起きとは打って変わったものだった。
長い紺青の髪は後ろで丁寧に纏められ、髪と同じ黒に近い深い青の衣装を身に纏う長身。
一見優男とも呼べるような風貌だが、腰元にはそれに似つかわしくない細身の剣が吊るされている。
彼こそが魔王ルシフェルの忠臣、蝿の王ベルゼブブであると言われて信じられるものがいるだろうか。
その上蝿の王の異名を持ちながらも、彼が姿を変えるのはその髪と同じ紺青の羽を持つ、青い瞳の小鳥だ。
その可愛らしい風貌を見て、誰があのルシフェルに従って地の底に落とされた醜き姿を思い浮かべるだろうか。
もっとも、彼自身は先のメイドの言葉通りに、ことあるごとに機嫌を損ねた主人に無理やり鳥に変えられては羽を毟られるため、あまりその姿を気に入っていない様子だったが。
「あれ? シルヴァーナ、ヴェルジュ様は?」
「部屋に戻って準備をしていらっしゃるわ。貴方も早く朝食を済ませなさい。でないといつまで経っても片付けが出来ないわ」
ふてぶてしく肩を竦めると、ウォラトは朝食の既に準備されたテーブルの前に腰を落ち着かせた。
「で、今日も僕は教会まで御者をやらされるわけだ?」
「あらよくわかってるじゃない」
「……僕が教会苦手だって知ってるくせに二人とも酷い……」
目頭を軽く押さえて嘆いて見せるウォラトに返す、シルヴァーナの声音は至って平坦なものだった。
彼女の声音が平坦なのは何も今回に限ったことではなかったが。
「だってそんなの私の知ったことじゃないもの」
本気で目頭が熱くなってきそうなのをウォラトは確かに感じ取っていた。
主人の前では至って従順な黒メイドは、しかし主の知る通りその腹の底まで真っ黒だった。
もっとも彼女に言わせてみれば、普通の神経をしていてはこんな化け物屋敷でメイドなどやっていられないのだ。
そんなことを口にすれば主人にどんな嫌味を言われたものか知れないので、賢明な彼女は決してそんな愚行を犯すことはない。
今口にしているのは偏に、目の前の相手が自分と立場を近しくするものだからに他ならない。彼の本性がどうであれ、気難しい主に仕える恐らくは不幸な従者という身分に代わりはないのだ。
彼女の読み通り、目の前の青年は気を害した風でもなく音も立てずに優雅に前に出されたスープを飲み上げた。
それと同時に食堂から廊下へと続く大造りの扉が開かれる。その先に立っていたのは他でもない、白皙の肌に磨き上げられたかのような銀の髪、美しいシャルトル・ブルーの双眸を携えた二人の主、カミーユ・ド・ヴェルジュその人だった。
「わぉ、ジャストタイミング」
「何がジャストタイミングだ、馬鹿者。主人の私より後に起きてくるとはいい度胸だな、ウォラト」
「ははは、やだなあ、ヴェルジュ様がいつも通りに起きてたら僕のほうが早かったに決まってるじゃないですか」
「ほう? 私に口答えとは、貴様も随分偉くなったものだな」
切れ長の瞳が更に細められる。切れ味のよい刃のような鋭利な光を宿した瞳に射抜かれ、ウォラトは早々に両手を顔の横へ挙げ降参の意を示した。
珍しくそれ以上追求をしなかったヴェルジュが、黒衣を翻し部屋の中の二人に背を向ける。
「行くぞ」
「畏まりました」
いつの間にか立ち上がっていたシルヴァーナが恭しく腰を折る。
「あのー、僕今食べ終わったばかりなんですけど……」
「貴様の都合など私の知ったことか」
呟いたウォラトへの言葉は何処かで聞いた覚えのある無情な一言だった。再び目頭に熱を感じる。
「ですって」
『何処か』が主に聞こえないほどの声で囁く。やけに白々しいその声は確実に確信犯のそれだった。
「…………似た者主従め……」
ウォラトの苦虫を噛み潰したような台詞は、二人の耳に入ることなく――入っていたとしたら二人から制裁が下っていたはずだ――彼の口の中でのみ呟かれるに留まった。
***
小さな町の教会裏で、一人男が立ち尽くしていた。手入れの行き届いた黒衣に身を包む長身痩躯の男だ。
男から数歩離れた場所で、やはり黒いコートに身を包んだ女性――シルヴァーナは彼をじっと見ていた。
その姿は神に与えられた罪の証なのだと、またその神に対する当て付けなのだとも彼は言う。
白皙の肌は変わらない。
だが夜の闇に溶け込んでしまえば、恐らくそのまま見えなくなってしまうであろう漆黒の長髪。
滴る鮮血よりもなお深く紅い、毒々しいまでの濃い真紅の瞳。
彼女の主が持つ色をそっくりそのまま反転させたかのような色をその身に纏う人物はしかし正真正銘、彼女の主であるカミーユ・ド・ヴェルジュその人だった。
そしてそれこそは、彼が持つ闇の王たる称号に最も相応しい姿だった。
彼はその背に漆黒の翼がないことが不思議なほどの神々しさと禍々しさを兼ね備え、そこにただ立ち尽くしていた。
月初めのミサの日に限り、彼はこうして朝から教会に赴いた。
だが決してその中に足を踏み入れようとはしないのだ。
彼はいつもミサが終わるまでこうして教会裏で何をするわけでなく、ただ立ち尽くしたまま空を見上げるのだ。
晴れの日も雨の日も雪の日もそれは変わることなく。
そして時折、その薄い唇から低く甘い声音で囁くように言葉を紡ぐのだ。
「Odi
et amo. Quare id faciam, fortasse requiris. Nescio, sed fieri sentio
et
excrucior」
ヴェルジュの厳かな低音の声が風もない教会裏に響く。
だがミサの真っ最中、その言葉を聞きとがめたのは傍にいるシルヴァーナだけだった。
ウォラトは教会から少し離れた裏通りに馬車を停め、教会には決して近づこうとはしない。
祈りの声が耳については、まるで何かの怨嗟のように頭の中で囁き続けて離れないのだと言う。だから教会には近づきたくないのだと。
目の前で静かに、祈るように天に言葉を捧げるヴェルジュにはその声はどのように聞こえているのか、シルヴァーナにそれを察することは出来なかった。
今の彼女には数歩先に立つ主の、聞きなれぬ言葉による囁き声しか聞こえなかった。
「Odi
et
amo……カトゥッルスですか」
「何だ、知っていたのか」
「ヴェルジュ様、もしや私を詩も芸術も愛でることのない哀れな娘だとでも思っておいででしたか?」
「無論そのように考えていたが、そうか、知っていたか。意外だな」
意外性の欠片も感じていないような声で言葉を紡ぐ主は、しかし言葉の間一度もシルヴァーナへとその紅の視線を向けることはなかった。
その鮮血色の瞳は切り裂くような鋭さをもって、教会の頂上に据えられた巨大な十字架へと向けられている。
その手には白銀に煌めく十字架が握られていた。
神の子が磔にされた十字を象るそれを握り締め、彼はその手に力を込めた。紛れもなく金属で作られているはずのそれは、細く長い、しかし男の骨ばった繊細な指の中でゆっくりとその形を変えていく。
やがて完全に握り締められたその掌を開くと、あとには醜くひしゃげた金属の塊のみがそこに残った。
「十字架をそんなにして……立派な神への冒涜行為ですね」
「イエスの何処が神なものかよ。私からしてみればイエス・キリストなぞ、少々力を与えられただけの単なる若造だ」
「その与えられた力こそが人々にとっては神の力なんじゃないですか」
「くどい。大体お前は私に仕えておいて、その上で今更何をほざく」
「ああ、確かにそれもそうですね」
悪びれる様子もなく肩を竦めた彼女にはそれ以上口を出さない。今日の主はいつもにいや増して寡黙だ。
「Odi
et amo……貴方は神を愛しておられるのですか、"Rex Obscurum"?」
"Rex
Obscurum"――闇の王と呼ばれた男はその紅の双眸をそっと伏せた。
その名を冠しながらも、人の世に存在する彼の姿は酷く孤独なものに見えた。
「…………私の中には神に対する憎しみとも呼ぶべき黒い感情がある。だがしかしそれと相反する感情があるのもまた事実だ。なればそれは神に対しての愛情とも呼ぶべきものなのだろう」
光ある世界から暗い地の底へと引き摺り落とされ、それでもなお抱き続けるその感情は美しいのか、それとも醜いのか。
浅ましい憧憬と執念深い妄執とが入り混じったようなその感情がどのようなものであるのかは、長き時の流れに存在する彼自身にも全く想像のつかないものであった。
この思いが神の被造物に対する何処か怨念めいた執着なのかもしれない。
所詮この世に存在するものは全て神の被造物なのだから、その真意はそこにいる誰にもわからなかった。
鐘が鳴る――Ite
missa
est――ミサの終わりを告げる鐘の音は清浄な響きをもって、泥ついた物思いのように重く淀んだ空気を震わせた。
「……私は無神論者ですから神に対して憎しみも、増してや愛情など抱くはずもありませんが」
シルヴァーナの視線は常と同じく平行、かつ口調はいつもと変わらぬ平坦さを保っていた。
「私は今ここに生きて、貴方に仕えて、それでお給金をもらっています。私が生きていく上でそれ以上に必要なことはありません。神は私にお給金を与えてはくれませんから」
淡々と事実を述べるようでいて酷く彼女らしい物言いに、ヴェルジュは口の端に苦笑を浮かべた。同時に、彼女が人を励ますような言葉を使うとは不気味だなどと考えてしまった自分は酷く性格が歪んでいるようだとも考えたが、そこは彼女の性格の歪み具合によって修正値が与えられた。
シルヴァーナの性格は、ヴェルジュのそれと負けず劣らず歪んでいる。
「帰るぞ」
踵を返した主の瞳は既にあの怜悧な蒼の双眸へと戻っている。同時に、漆黒の長髪は適度な長さの銀髪へと様変わりしていた。
すれ違いざま、彼はまだ握られたままだった十字架の成れの果てをシルヴァーナに投げ寄越す。
「……これを私にどうしろと仰るんですか」
「くれてやる。純銀製だ、加工するなり売り飛ばすなり好きにするがいい」
直後、シルヴァーナは不気味なほどににっこりと、その顔に形のよい笑みを浮かべた。
「帰ったら熱いお茶をご用意しますわ、ヴェルジュ様」
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